1. “フツー”の中に無理に留まる必要はない。ハブられ経験者の漫画家・鳥飼茜が語る自分らしさの作り方<前編>

“フツー”の中に無理に留まる必要はない。ハブられ経験者の漫画家・鳥飼茜が語る自分らしさの作り方<前編>

編集部企画

女性はいつだって欲張り。

大好きな物に囲まれて自分らしく生活したいと願うのが女心です。

でも、“自分らしさ”を聞かれて、頭の上に“?”が浮かぶ人も少なくないはず。

特に、多感で可能性無限大の10代の女の子なら社会と自分らしさの狭間でジレンマを感じることが多いかもしれません。

現在37歳の鳥飼茜さんは、平凡な日常生活を鋭い視点で切り取り、

自身も通ってきた10~20代の女性が抱える悩みを描いてきた漫画家の一人。

多くの女性の共感を集める鳥飼さんに、“自分らしさ”について訊ねてみました。

 

自分と他人との違う部分と共感できる部分の集合体が“自分らしさ”

鳥飼さんの『ロマンス暴風域』は、30代の男性主人公・サトミンが真実の愛を求めて奔走する姿を描いた作品。

発売中の2巻ではサトミンの周囲に、彼氏との関係に悩む女子大生から母親との折り合いが悪いバツ2の女性まで、

さまざまな個性と生活を持った女の子が次々と現れます。

その中で彼が選んだ女の子は、なっちゃんというぽっちゃり風俗嬢。

サトミンはなっちゃんとの同棲生活の中で、自分の身の丈に合った“幸せ”を見出さそうとしながらも、

その一方で頭の中では別の女の子ことを想い、どこか自分を見失った状態になります。

――サトミンからは、「今の自分は本来の自分ではないって否定し続けるカンジ」と作中である女の子が指摘する通り、自分らしさが何かわからずモヤモヤした感じが伝わってきます。そもそも、自分らしさとはどのように作られていくものなのでしょうか?

鳥飼:よく、「もっと個性が際立ったキャラクターを描いてください」と編集者から言われるんですが、

自分らしさを形作ることとマンガで新しいキャラクターを生み出すことはどこか似ているんじゃないかなって思うんです

新しいキャラクターなんて自分の中だけをいくら探しても見つからなくって。

他人との関わりで生じた差異や、ひとの発言の中の寄り添える部分を探していくことで、形作っていくんです。

同じように、自分と他人との違う部分と共感できる部分の集合体が“自分らしさ”になっていくんじゃないかな。

 

自分の本心じゃない部分に自分らしさを求めてしまう

――他人との関わる中でそこにある“自分らしさ”を見つけていくということですよね。

でもどうして、サトミンのような大人から10代の若い女の子たちまで、“自分らしさ”に悩みが生まれるのでしょうか。

鳥飼:自分の本心じゃない部分に自分らしさを求めて、自分らしさの箱があやふやになってしまっているんじゃないかと思います。

「友達が持っているから」「流行っているから」「●●が言っているから」とか。

本当に共感しているのかを自分の中で噛み砕く前に、どんどん箱の中に放り投げていくと、脆い箱ができあがっちゃうから。

 

徹底的に問いを投げかけて深掘りしていかなきゃならない

――生きていくだけで形作られる自分らしさがある一方、受け身でいるだけでは脆い自分らしさになってしまうということですよね。

鳥飼:自分がフィットをする言葉が出てくるまで徹底的に問いを投げかけて深掘りしていかなきゃダメだと思うんです。

人との会話でそれが見つからないなら、映画、音楽、本、そして私の漫画を見て読んでみて(笑)。

「私はこう思う」「作者はこう思っているのかもしれない」って考えるんです。他人の意見は世の中にたくさん転がっているんだから。

 

後編はコチラ

 
●鳥飼茜(とりかい・あかね)プロフィール
‘81年、大阪府生まれ。’84年デビュー。『地獄のガールフレンド』(全3巻、KADOKAWA)、『先生の白い噓』(全8巻、講談社)を代表作にもつほか、近刊に『前略、前進の君』(小学館)、『マンダリン・ジプシーキャットの籠城』(KADOKAWA)がある。漫画だけでなく、『鳥飼茜の地獄でガールズトーク』(KADOKAWA)、『漫画みたいな恋ください』(筑摩書房)など、文筆業も精力的にこなす